予防接種先進国といわれるアメリカの予防接種。日本も近年、子供の定期予防接種として扱われるワクチンの種類が増えて、アメリカでの予防接種レベルに近づきつつあります。が、まだ定期接種に含まれておらず、実費で予防接種を受けなければいけないものもあります。ここでは、2020年4月時点でのアメリカの予防接種の種類やスケジュール、接種の仕方などを、日本の場合と比較して違いを見ていきたいと思います。
目次
アメリカの予防接種スケジュール(4歳まで)
まずは、アメリカで出まれた子がどのようなスケジュールで予防接種を受けるのか、ミシガン州にあるUniversity of Michigan Hospitals and Health Centers において、私の子供が実際に受けた予防接種の例を下の表でご紹介します。
生後すぐ | B型肝炎①(※3) |
2か月 | (ジフテリア①,破傷風①,百日咳①、B型肝炎②,ポリオ①)の5種類混合,ロタ①,ヒブ①、肺炎球菌① |
4か月 | (ジフテリア②,破傷風②,百日咳②、B型肝炎③,ポリオ②)の5種類混合,ロタ②,ヒブ②、肺炎球菌② |
6か月 | (ジフテリア③,破傷風③,百日咳③、B型肝炎④,ポリオ③)の5種類混合,ロタ③,ヒブ③、肺炎球菌③ |
12か月 | ヒブ④、(麻疹①,風疹①,おたふく①)の3種類混合,水ぼうそう① |
15か月 | 肺炎球菌④,(ジフテリア④,破傷風④,百日咳④)の3種類混合,A型肝炎① |
2歳 | A型肝炎② |
4歳 | (麻疹②,風疹②,おたふく②)の3種類混合,水ぼうそう②,(ジフテリア⑤,破傷風⑤,百日咳⑤)の3種類混合,ポリオ④ |
(※1)アメリカでの予防接種はCDC(アメリカ疾病予防管理センター)の推奨に基づいて行われていますので、より詳細なスケジュールはCDCの英文サイトをご覧ください。https://www.cdc.gov/vaccines/schedules/hcp/imz/child-adolescent.html
(※2)日本での予防接種の詳細スケジュールは国立感染症研究所のサイトが分かりやすいのでご覧ください。http://www.niid.go.jp/niid/ja/vaccine-j/2525-v-schedule.html
(※3)①~④の各予防接種ワクチンの横の数字は、各ワクチンの何回目接種かを示す。(例 ①:1回目、②:2回目、③:3回目、④:4回目)
アメリカの予防接種の特徴
・アメリカでは数か月ごとにある子供の検診時に、何種類ものワクチンを一気に同時接種することが普通で、予防接種のために何度も通院する必要がありません。日本でも最近は複数のワクチンを同時接種する傾向にありますが、やはりアメリカの方が同時接種の頻度は高いです。
・我が子の場合、アメリカでは予防接種の注射を2歳くらいまで大腿部(太ももの部分)に打ちました。一気に4種類を打つときは、右足に2本、左足に2本の注射をブスブスと打っていました。近くで見守る母としては、その豪快さにドキドキしました。
アメリカでの各予防接種の接種回数などの詳細(4歳まで)
B型肝炎(HepB/Hepatitis B)
アメリカでは、出産して1時間後くらいには我が子にB型肝炎のワクチン接種があり、正直その早さに驚きましたが…、赤ちゃんを感染から守るためには、母親がB型肝炎に感染している場合は出生後12時間以内、母親が感染していなくてもできるだけ早めにワクチン接種することが良いとされています(私はこの時、B型肝炎に感染しておりませんでした)。B型肝炎ワクチンは3回接種が必要で、しかも3回目の接種が生後6か月以上になるように接種するとワクチンの効果が長く続くと言われています。我が子の場合は、生後すぐ、2か月後、4か月後、6か月後の4回接種しておりますが、これは、2回目以降の接種が他のワクチンとの混合接種であったため、他のワクチンのスケジュールに合わせて、本来なら必要ない生後4か月のB型肝炎の接種も行いました。(混合ワクチンを用いた場合に4回接種しても問題ないとCDCも承認しています)。
日本の場合(HepB:定期接種)
日本でも、2016年10月1日から定期接種が導入されました。日本でも計3回(生後2か月、生後3か月、生後6か月~生後9か月の間に1回)接種をします。日本では生後2か月に多くの子が初回のB型肝炎の接種をするところが、アメリカとの違いです(母子感染のおそれがある場合は、生後12時間以内に接種します)。
ジフテリア(Diphtheria)・破傷風(Tetanus)・百日咳(Pertussis)→3種混合(DTaP)
ジフテリアと破傷風、百日咳は3種類混合ワクチンとして接種します。混合ワクチンにはDTPワクチンとDTaPワクチンの2種類があるのですが、より新しく開発されたDTaPワクチンの方が副作用が少ないため、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)ではDTaPを推奨しており、アメリカではDTP接種はもう実施されておりませんので、我が子もDTaPワクチンを接種しました。DTaP予防接種は5回受ける必要があり、私の子供は、生後2か月、生後4か月、生後6か月、生後15か月、4歳の時に接種しました(生後2か月、4か月、6か月は(※4)に記載のPediarix(5種混合ワクチン)として接種)。
(※4)Pediarixとは、ジフテリア,破傷風,百日咳の3種混合ワクチン(DTaP)と、B型肝炎(HepB),ポリオ(IPV)を混合した5種混合ワクチンのこと。
日本の場合(DTaP:定期接種)
日本ではジフテリア、破傷風、百日咳と不活化ポリオの4種混合ワクチン(DTP-IPV)として、生後6か月までに3回(第一期)、3回目の接種から1年以上の間隔で4回目(第一期追加)の接種をします。
不活化ポリオ(IPV/Inactivated Poliovirus)
アメリカでは不活化ポリオワクチンを生後2か月、4か月、6か月、4歳の時の4回接種します。CDC(アメリカ疾病予防管理センター)によると、過去に使用されていた経口の生ポリオワクチン(OVP)により、約240万人に1人の確率で実際にポリオ(小児麻痺)を発病してしまうことがあり、特に初回の予防接種後が一番感染の危険が高く、このような背景から現在は不活化ポリオワクチンの接種を推奨しているそうです。
日本の場合(IPV:定期接種)
日本では以前は経口の生ポリオワクチンが定期接種として使用されておりましたが、2012年9月1日から不活化ポリオワクチンが代わりに定期接種として受けられるようになりました。日本ではジフテリア、破傷風、百日咳と不活化ポリオの4種混合ワクチン(DTP-IPV)として、生後6か月までに3回(第一期)、3回目の接種から1年以上の間隔で4回目(第一期追加)の接種をします。
ロタウイルス(Rota/Rotavirus)
ロタウイルスワクチンには、内容と接種スケジュールが違うロタリックス1価(2回接種)とロタテック5価(3回接種)の2種類のワクチンがあります。我が子の場合はロタテック5価を使用したため、生後2か月、4か月、6か月の計3回、経口生ワクチンとして接種しました。ロタウイルスに感染すると嘔吐を伴う激しい下痢になり、入院が必要になったり、最悪のケースでは死亡してしまいます。しかも、ロタウイルスは感染力が高く、周りにいる人達に容易に感染してしまいます。CDC(アメリカ疾病予防管理センター)によると、ロタウイルスの予防接種を受けた子供の約50~70%がロタウイルスに全く感染せず、さらに、もしも感染しても、重度の下痢を避けられる可能性が極めて高いことが分っているそうです。実は、私の子供は生後9か月でロタウイルスに感染しました。でも、予防接種をしていたお陰で、確かに嘔吐もかなりあり下痢もひどかったのですが、入院するほど悪化することはなく、自宅療養で約1週間で治りました。このワクチンを接種しておいて本当に良かったと思いました。
日本の場合(Rotavirus:定期接種)
2020年10月より、ロタウイルスの予防接種が、定期接種として受けられるようになりました!!
アメリカ同様に、日本でもロタウイルスのワクチンはロタリックスとロタテックの2種類あります。ロタリックスは、出生6週0日後から出生24週0日後までに2回経口接種:1回目と2回目の間隔を27日以上空けて2回接種、ロタテックは出生6週0日後から出生32週0日後までに3回経口接種:1回目から3回目の間隔を27日以上空けて3回接種となっております。この2種類のワクチンは、どちらも予防効果や安全性に差はないそうですが、途中でワクチンの種類を変えることはできないそうです。
インフルエンザb型(ヒブ)ワクチン(Hib/Haemophilus influenzae type b)
5歳以下の子供がかかると言われている、Hib(ヘモフィルス属インフルエンザb型菌)感染による細菌性髄膜炎を予防するワクチンです。CDC(アメリカ疾病予防管理センター)によると、Hibワクチンができる前には、毎年アメリカの5歳以下の子の約2万人が重症のHibに感染し、約1000人がHibにより死亡していたそうです。我が子は、Hibワクチンを生後2か月、4か月、6か月、12か月の計4回接種しました。
日本の場合(Hib:定期接種)
2008年12月から日本でもHibワクチンの接種を開始し(この時は任意接種だったため、費用は自己負担)、2013年より定期接種として受けられるようになりました。小児用肺炎球菌のワクチンとの同時接種が一般的で、生後2か月~7か月の間に3回(各回の間隔は4週~8週)、3回目接種から7か月後に追加接種を1回、トータル4回接種します。
小児用肺炎球菌(PCV13/Pneumococcal 13)
5歳未満、特に0歳~2歳の幼児は肺炎球菌への免疫がほとんどないため、肺炎球菌に感染すると重症化する危険性が高く、最悪の場合では死亡する可能性もあると言われています。PCV13には、子供に重篤な感染症(細菌性髄膜炎、敗血症、潜在性菌血症、中耳炎、肺炎など)を引き起こす13種類の肺炎球菌に対するワクチンが含まれています。肺炎球菌は、過去にこの菌の治療に使用されてきたいくつかの薬剤に対して耐性を持つものがあり、感染してからでは治療ができない場合もあります。なので、予防接種による予防がとても大切です。アメリカでは、我が子は、肺炎球菌ワクチンを生後2か月、4か月、6か月、15か月(12か月~15か月の間に4回目の接種をすることをCDCは推奨しています)の計4回接種しました。
日本の場合(PCV13:定期接種)
2013年11月からPCV13が定期接種になりました。Hibワクチンとの同時接種が一般的で、生後2か月~7か月の間に3回(各回の間隔は27日以上)、3回目接種から60日後かつ1歳以上で追加接種を1回、トータル4回接種します。
結核(BCG)
アメリカでは接種しません。その代わり、入園・入学時にツベルクリン検査(Tuberculosis Screening)で結核に感染しているかどうかを確認します。アメリカではBCGの予防接種がないので、結核に対して免疫を獲得している人は通常はおらず、ツベルクリン反応の検査で、“陽性=結核感染者“と判断されます。
日本の場合(BCG:定期接種)
結核に対する免疫を獲得するために1歳までに1回予防接種をします。そのため、日本ではツベルクリン反応検査で、陽性=結核に対する免疫がある(結核に感染していない)と判断します。
注意!!アメリカへ長期渡航予定の方は、診断書が必要です!
アメリカと日本では、上記のようにツベルクリン反応の結果の捉え方が異なります。日本でBCGの予防接種をした人は、アメリカでの入園・入学時の検査などでツベルクリン反応陽性(結核感染者)とみなされる可能性が高く、不必要な治療を要求される場合もあります。そのため、アメリカへ長期間渡航予定の方は、結核症ではないという英文による診断書を担当医師に書いてもらう必要があります。その場合は、①ツベルクリン反応が陽性であること。②BCG予防接種をしたこと。③胸部のレントゲン検査などで結核でないことを確認したこと(この③の部分がないと、アメリカで検査が必要になることがあります)。という内容を記載してもらう必要があります。
麻疹(Measles)・おたふく風邪(Mumps)・風疹(Rubella)→3種混合(MMR)
アメリカでは、麻疹(はしか)、おたふく風邪、風疹(三日はしか)の3種混合の生ワクチン(MMR)を接種することが普通です。1歳の時(生後12か月~18か月の間に1回目接種)と、4歳(4歳~6歳の間に2回目接種)の時の計2回接種します。これにより、ほとんどの子供は麻疹・おたふく風邪・風疹に感染しにくくなります。また、これらの病気は大人になってから感染すると重症化しやすいと言われています。特に妊娠中の女性が風疹に感染すると、流産や、生まれてくる胎児に先天性異常を引き起こす原因にもなるため、成人でも予防接種を受けることが大切です。
日本の場合(麻疹・風疹 MR:定期接種、おたふく風邪→任意接種)
日本では、おたふく風邪は2019年時点では任意接種となっております。麻疹・風疹(MR)は定期接種です。麻疹・風疹も、おたふく風邪もどちらも1歳になったら1回目の接種が可能なので(1歳になると感染しやすくもなります)、できるだけ1歳になったら早めに1回目の予防接種を受けた方が良いと言われています。また、小学校入学前の1年間(5歳ごろ)に2回目の接種を受けます。トータル2回接種します。
水ぼうそう(VAR/Varicella)
水ぼうそうは一般的な小児の病気ですが、乳幼児が感染すると重病になる場合があります。アメリカでは、1歳(生後12か月~15か月の間に1回目)の時と4歳(4歳~6歳の間に2回目)の時のトータル2回接種します。
日本の場合(VAR:定期接種)
2014年10月1日から日本でも定期接種として受けられるようになりました。1歳に1回目の接種、1回目の接種から3か月以上の間隔をあけて2回目の接種をし、トータル2回接種します。
A型肝炎(HepA/Hepatitis A)
A型肝炎は、A型肝炎ウイルスに感染している人の便に排出され、またA型肝炎ウイルスに汚染されている食物や飲み物などから感染する肝臓の疾病です。具体的な症状は、黄疸が出たり、強い腹痛や下痢などがあります。A型肝炎に感染している人が作った料理から感染することもあり、意外に感染確率は高く、カリブ諸島や東ヨーロッパなど世界には発症率が高い国が結構あります。アメリカでは定期接種になっており、我が子は、生後15か月に1回目、2歳の時(1回目の接種から最低6か月以上の間隔をあける必要がある)に2回目の接種をし、トータル2回接種しました。
日本の場合(HepA:任意接種)
日本では任意接種となっております。そして、私が住んでいる市町村が配布している子供の予防接種スケジュールには、任意接種の欄に、A型肝炎という項目すら記載されておりません。日本では、A型肝炎の予防接種はあまり重要だと今のところ考えられていないようです。ただ将来外国へ行こうと考えていらっしゃる方などは、接種を検討されても良いと思います。
日本脳炎
アメリカでは、日本脳炎の予防接種をしません。日本脳炎は、日本脳炎ウイルスを保有する蚊に刺されることで感染する重篤な急性の脳炎です。日本や主にアジア地域で流行しています。北米では感染しませんが、アメリカに永住している方でも、もしもたまに日本へ一時帰国することがある方や、また、いずれ日本で生活する可能性のある方は、日本脳炎の予防接種を受けると良いと思います。日本脳炎の予防接種は、日本へ一時帰国する際に接種することも可能ですし、または、アメリカでも日本脳炎のワクチンは接種できるそうですので、アメリカで日本の予防接種のスケジュールに合わせて、接種するのも良いと思います。
日本の場合(日本脳炎:定期接種)
日本では3歳の時に2回、4歳の時に追加接種1回、9歳の時に第二期追加接種1回の計4回接種することになっております。
まとめ
アメリカと日本の子供の予防接種スケジュール比較をして、日本もアメリカのスケジュールにだいぶ近づいてきたことが分かりました。ただ、アメリカでは定期接種として認められているロタウイルス、おたふく風邪、A型肝炎などの予防接種は、日本では任意接種となっておりますので、ご自身のお子様に接種するかどうか十分検討する必要があります。また、アメリカへ長期渡航される方は、ご家族分(特にお子様)の予防接種の接種済証明書(英訳)を持っていき、お子様の入園・入学時に学校に提出できるよう忘れずに準備しておきましょう。さらに、上述したBCG予防接種の英文診断書も忘れずに準備しましょう。
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