駐在妻の心得。そうなんです、あるのです。もちろん、ご主人様の赴任先の会社にもよりますし、赴任している会社の日本人家族の数、そしてその奥様方の性格や現地での生活スタイルなどでも違いは出てきます。でも、駐在妻の方なら、海外の独特な日本人社会で少なからず生活しづらさを感じたことがあると思います。ここでは、私が実際に経験した、駐在妻の体験談を参考までにお伝えさせていただきます。
目次
第一印象を大切に!郷に入っては郷に従え
それは私が渡米した日のことです。日本からの長いフライトを終えて、数か月前から先に赴任していた夫が既に契約したアメリカの我が家に私が初めて入ってすぐ、夫から会社の奥様方の名前と電話番号が記載されたリストを渡されました。「なに?これ?」と思っていると、夫が「会社の一番先輩にあたる奥様、ここでは○○さんと、○○さん、○○さんにまず到着したらすぐに挨拶の電話をした方がいいらしいよ」と言われました。
時差ぼけと疲労、そして何も揃っていないめちゃくちゃなアメリカの家の中で、まだ自分の家の間取りさえも把握できていない状況で、”まだ会ったこともない人に電話!?何言ってるの!?夫は慣れないアメリカの生活で、とうとう頭がおかしくなってしまったのか!?”と、私はびっくりして「さすがに着いてすぐ連絡とかはあり得ないよ!?、冗談だよね?」と伝えました。
そうしたら、夫が言うには、私より2週間早くアメリカに来た、いわゆる私と同期にあたる駐在妻の方が、先輩奥様にしばらく電話せず、陰口をたたかれて失敗したらしい…とのこと。こ、こわ…。
その話を聞いてこわくなってしまった私は、まだ一度もお目にかかったことのない先輩奥様3名に電話をかけました。
「はじめまして。今さっき、アメリカに到着しました。これからお世話になります。わからないことだらけですので、色々教えて下さい」といった内容です。
そうしたら、予想とは全く違い、電話の向こうでの先輩方はとても優しく親切に接してくださり、そのうちの1名の方は、私のお世話係を名乗り出てくださいました。(お世話係とは、最初の1か月くらい、アメリカのスーパーで何を買うといいか、現地でおススメのお店、英語の家庭教師の情報などを、新しく来たばかりの奥様に教えてあげる係です)。緊張しましたが、ここでのルール?にのっとって、きちんと礼儀正しくすぐに電話でご挨拶できて良かったです。
この電話ルールは、私の夫の会社だけの特有なものだったとは思うのですが、自分の価値観とか関係なく、右も左も分からない新しい地(特に外国!)で、これから必ずお付き合いさせていただく存在(組織)があるのであれば、まずは、そこの流れにスムーズに加わる努力をすることは大事だなと思いました(どっぷり漬かるのは大変ですが、やはり組織の一員なので、このへんは大人として頑張った方が良いです)。なぜなら、外国での日本人社会はとても狭くて濃いからです。第一印象!大事です!!
歓迎会(ポットラックパーティー)で顔合わせ
アメリカ到着後、会社の奥様だけで開催してくださる歓迎会が平日に少なくとも週1回のペースであり(会社の奥様が沢山いらっしゃったので、開催してくださるメンバーも毎回違ったため、新入りの私はそのすべての会にお誘いしてもらいました)、さらに、家族で皆様集まられて開催してくださる歓迎会が毎週末あり、この生活が約1か月くらい続きました。つまり、だいたい1週間に2回以上(多い時は4回!)歓迎会がありました。
しかも、アメリカでよくあるポットラックパーティー(お料理の持ち寄りパーティー。皆様だいたい手作りの品を1品持っていく)なので、最初の1週間くらいは日本のお土産で済んだのですが、それ以降は、私も手料理を持参することに。これが、なかなかハードでした。というのも、まだまともにキッチン用品が揃っておらず、パーティー用の料理作りにも慣れておらず、渡米すぐなので食材だって買いに行くまでに一苦労で、スーパーまでの道もよく分からないし、慣れない車の運転もドキドキでした。そして、夫が休みの貴重な土日に、自分の家の家具などの買い物などに出かけたかったのですが、パーティーが頻繁すぎて、全然できません。しかも、新しく沢山の方々に会うのって、やっぱりエネルギーを使うので、毎回どっと疲れが…。
「やばい、私…。すごく疲れてきた…。」夫に半泣きで愚痴を言うのが精一杯でした。私は、もともと海外でも一人でどんどん動いていくタイプの人間だったので、この拘束感というか、自分の意図に反して予定が次々に埋まっていく感じが耐えられなくなってきました。でも、なんとか皆様と顔合わせすることができました!!
以上のように、海外では、これだけ会社の人たちのつながりは強いということです。家族ぐるみでのお付き合いをして、何かあったら助け合う必要もあります。ただ、この頻繁すぎるポットラックパーティーが、いつの間にか私の中で”ポットラッ苦パーティー”へと変貌していったのは確かです。
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身内の愚痴(文句)は言ってはいけない
どこで生活していても誰かの文句は言うべきではないのですが、駐在妻は決して家族(特に、夫)の愚痴を周り(特に会社の奥様)に言うべきではありません。なぜかというと、その愚痴の内容は一気に会社中を駆け巡るからです。これは、私の知り合いの奥様が実際に経験してしまったことなのですが、本当に一夜にして噂が広まっていました…。
「ちょっと自分の夫の愚痴を言っただけなのに…」と思うかもしれませんが、それを聞いた奥様は、とりあえず雑談としてその日のうちにその内容を自分のご主人様に話すでしょう。なぜかというと、会社の人の話題は、その夫婦の共通の知人の話題になりますので、話が盛り上がるからです!
というわけで、狭くて濃い家族ぐるみのお付き合いの中で、わざわざ自分の家族の愚痴を言って、大事な家族のイメージを下げてしまってはいけません。そのイメージは自分が駐在している間ずっと消えません。そして最終的に、そんなイメージの良くない家族がいる奥様自身の価値まで下げて、奥様に対しての良くない噂も立てられてしまうだけです。
一時帰国の際の”太鼓の達人”事件!
事件というほどのものではないのですが、私の中では事件くらいの衝撃を受けましたので、あえて事件と呼ぶことにします。
私は渡米して2年が経ったころ、身内の結婚式が日本であるために初めて一時帰国することになりました。その際に起こった出来事です。
会社の奥様にはまだ誰にも一時帰国の話はしておりませんでしたが、夫も身内の結婚式に出席するために、できるだけ早めに会社に報告する必要があり、数か月前には会社の上司だけに連絡しておりました。その流れで、一時帰国することが決まった数日後に、夫の上司の奥様から、その奥様の旦那様→私の夫経由で一枚のメモ用紙が届きました。そこには、
「一時帰国で買ってきて欲しいもの。①・・・②・・・③・・・④太鼓の達人⑤・・・」
と確か5項目ぐらい書いてあったのですが、全部ゲームソフトの名前でした。「これを買ってきてほしいらしいよ」と、旦那経由で言われました。一時帰国する人に、こうやって何か頼むシステム?でもあるのか?私にはよく分からなかったのですが、まぁ、ゲームソフトくらいならそんなに荷物にならないし、いつもお世話になっているから、これくらい買わないといけないな…と思っていました。
いよいよ一時帰国し、久しぶりの日本の滞在予定はたった1週間(夫は2日間!)だったのですが、とりあえず、頼まれたものを先に買っておいてしまいたくて、まずゲームソフトを最優先で探しにお店へ足を運びました。私は当初、子供もおらず、ゲームにも全く興味がなかったので、店員さんにリストを渡して、ソフトをお店で探して持ってきてもらったのですが‥‥それを見てびっくり!!!
太鼓の達人の太鼓の大きさがハンパないっ!!!!!!それを見ただけで、アメリカへ帰る際の自分の姿を想像し、愕然としました。
「えっ?太鼓の達人って、この大きい箱入りの太鼓も必要なのですか?」
と思わず、二度も店員さんに確認してしまった私。
2年ぶりに帰国し、自分の買いたいものも沢山あり、わざわざスーツケースを空っぽにして持ってきたくらいなのに、このスーツケースにも入らないくらいのサイズの大きい箱入りの嵩張る太鼓を、私は持って帰らないといけない…。それを、私にさせようと思った?会社の先輩奥様にも、正直ショックを受けてしまいました。この事件は私にとってはかなり衝撃的でした。
でも、この事件があったおかげ?で、私は良い意味でとても勉強にはなりました。一時帰国する友人がいて、その友人が「何か買ってくるよ?」なんて、仮に好意で言ってくれたとしても、私は絶対に具体的なものは頼まないことに決めました。もしも友人がそれでも何か買ってきてくれると言うのなら、その友人が行ったお店で、友人が選んでくれたお土産が嬉しい!と伝えることにしました。
具体的なものを頼むと、その人の貴重な日本での時間を、それを買うがために奪ってしまうことになります。
狭い社会ですので、とにかく良い距離感で、みなさんと気持ち良くお付き合いできることって大事です。
適度な距離感
適度な距離感を取ることが大事。と言っても、渡米したばかりだと他に予定がないのは皆さまも分かっていらっしゃるので、お誘いをお断りするのも大変です。仮病だってそんなに沢山使えません。
じゃあ、どうするか!?
答えは、簡単です。そうです、忙しくなればいいのです。手っ取り早く、英語を習いに行きましょう!それこそ会社の奥様から情報を教えてもらって、必ず家の近くに1つはESL(English as a Second Languageの略。英語を母国語としない人のための英語クラス)があると思いますので、そこに申し込みに行きましょう!もしも、出かけるのがまだちょっと不安でしたら、家庭教師(チューター)を依頼して、先生に家に来てもらいましょう!
私は、家から近くにある、コミュニティカレッジ(OCC)に通うことにしました。ここは、宿題も沢山出て、結構真剣に英語を勉強できる学校でしたので、会社の奥様方も「あの人は英語で忙しい人!」という感じで、それ以来、適度な距離感で素敵な関係を保てるようになりました。英語も習得できて、さらに、コミュニティカレッジで同じように英語を頑張る日本人や他の国の友人もでき、とても良かったです。
まとめ
海外の狭い日本人社会で生活していくのは大変な面もあります。でも、海外生活をしていくにあたって、いざという時に助け合えるのも同じ日本人だからこそ。適度な距離感で素敵な関係が保てるように、1つの人間関係に縛られずに、外に思い切って出かけて貴重な海外生活を楽しみましょう!
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